平安のロマン

「東風(こち)吹かば 匂ひおこせよ梅の花 主(あるじ)なしとて春を忘るな」
皆さんがよくご存じの菅原道真が、藤原氏との政争に敗れ、九州の太宰府に左遷され、自邸の梅を思い浮かべて詠んだ歌ですね。
三寒四温の日々でしたが、ようやく東京でも梅の花が咲く時期になりました。
エコーレア本社のある東十条に、平安時代のロマンを感じられる場所があります。
それは「平井保昌の杉と和泉式部の梅」。

杉と梅の木

今から千年前のこと。平井保昌は、源頼光に仕えた武士で、渡辺綱や坂田金時などの四天王とともに世に知られた人物だったそうです。
伝説によれば、保昌が東国を巡視した時に十条の崖下を通り、岸村の波打ち際で昼食をとりました。(千年前この辺りは、海だったんですね。驚き!)ところが箸がなく、かたわらの杉の小枝を箸の代わりにしました。使い終わった箸を地面にさして「源氏万代に栄えるものならば、この箸、根や葉を生じて繁茂せよ」と念じたところ、のちに王子の二本杉といわれる大木となりました。この杉も明治43年の嵐で倒れてしまいましたが、その杉で造った「扁額」は、近くの飛鳥山博物館に保管されています。
保昌は後に出世して丹後の守となり、恋多き才女の和泉式部(紫式部や清少納言と同時代の女性歌人)と結ばれて丹後国に赴任したそうです。和泉式部がこよなく梅を愛で、御所紫宸殿の中庭の紅梅を所望していることを知った保昌が、その紅梅を献じ、あいを射止めた逸話は有名ですね。それからも式部さんは生涯梅を愛し続けたそうです。
そんなロマンのあった場所に、今、紅梅が咲き誇り、植樹された杉が凛々しく佇んでいます。
そして保昌さんの歌
「かたがたの 親の親どち 祝ふめり 子この子の千代を 思こそやれ」
式部さんの歌
「あらざ覧 この世のほかの 思い出に いまひとたびの 逢ふこともがな」
の2首が掲げられてます。

和歌

王子・十条方面に来られたらお立ち寄りして、平安のロマンに浸るのも一興かかと思い今回ご紹介させていただきました。
場所は東十条1丁目 王子小学校の近くです。
自然派エコーレアのTでした。